「白い傘」 from Memories Off by KID

・第1回 雨の日のプロローグ

降りしきる雨、路上に落ちた白い傘、ハザードランプのオレンジの点滅・・・。
冷たい雨の中に白いワンピースの女の子が倒れている。
「まさか、そんな・・・。」
周囲の音が聞こえなくなり、頭の中が真っ白になる。
「彩花・・・。」

どれだけ経ったのだろうか。
「・・・もや、智也・・・、智也ってばぁ・・・。」
誰かが肩をゆすっている。
「ねぇ、智也ってばぁ。」
聞きなれた声が自分を呼んでいる。
「どうしたの?濡れるよ。」
ゆっくりと重い頭を声のする方に向けてみた。
白い傘、、、ロングの髪、、、ヘアバンド、、、。
「あ、あ、あ・・・。」
声にならない。
傘を差しかける女の子はきょとんとした顔で首を傾げた。
その瞬間、両手でその女の子を抱きしめる。
「ちょっとぉ〜、どうしたの?人が見てるよ。」
しかしその声を無視するように手に力を込める。
「智也ぁ〜、痛いよぉ・・・。」
落とした傘がコロコロと転がる。

暖かい肌、、、心臓の鼓動、、、そして甘い柑橘系の香り。
自分の大切な全てが腕の中で息づいている・・・。
「彩花・・・、無事だったんだ・・・。」
やっとの思いで口から出た言葉は、それだけだった。

路上に降り続く雨・・・。
転がった2つの白い傘・・・。
そして、いつまでも女の子を抱きしめる男の子の姿があった。

to be continued ... written by 竹河晴(AZALIN) 2001.07.18

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・作者後書き
ショートストーリー第2弾はお気に入りキャラNo.1の桧月彩花SSです。
お題は、「彩花が生きていたら・・・。」(ありがちではありますが・・・)
本当はもうちょっと腕が上がってからとか考えていましたが、やっぱり彩花(はぁ〜と)・・・(爆)
事故に遭ったのは別の女の子。さて、これから一体どうなるのでしょうか?