「白い傘」 from Memories Off by KID

・第2回 夏の朝

「智也ぁ〜、痛いよぉ・・・。」
「彩花・・・、無事だったんだ・・・。」
「智也・・・。私はここにいるよ。いつまでも智也の側に・・・。」
でもちょっと腕が痛くなってきたんだけど・・・。
ねぇ智也ってばぁ・・・。
ちょっとぉぉぉ・・・・・・痛いってばぁぁぁ・・・・・・。

ピピピピピピピピ・・・・・・。

あっ、、、あれぇぇ?
ベットと壁の隙間に落ちかけた格好の彩花は目を覚ました。
枕元の目覚ましが乾いた電子音を発している。
・・・痛かったのははさまっていたから・・・?
・・・フフッ、いい夢見ちゃった・・・。
彩花は落ちかけた体を起し、窓の外を見ながらのびをする。
窓の外には智也の部屋が見える。
「今日はいいことありそう。」

朝食後、部屋に戻った彩花は椅子に座って天井を見上げていた。
「そうか、来週なのよね。」
そこに突然、部屋のドアが空いて唯笑が入ってきた。
「あ〜や〜ちゃん」
「あっ、唯笑ちゃん。いらっしゃい〜。」
「うん、ねぇねぇ彩ちゃん、プール行かない?」
「プール?」
「智ちゃんも誘ってさぁ。」
「そうねぇ。でも準備があるのよねぇ。」
「準備ぃぃ?来週の・・・。」
「うん。」
「唯笑だって知ってるけどいいじゃない。彩ちゃんが行っちゃったら遊びに行けないんだよぉ。」
「それもそうね。じゃぁ智也を起こしに行きましょう。どうせ寝てるんだから。」
と言って窓を開ける彩花。

「えぇぇぇ・・・、またここから行くのぉ。」
「うん。」
「唯笑、怖いよぉぉぉ。」
「唯笑ちゃんも慣れたら平気よ。」
「やだぁ、怖いもん。」
「もぅ。じゃぁ私行くからねぇ。」
と言って彩花はひょいっと屋根に登った。
「彩ちゃ〜ん、置いてかないでよぉ。」
唯笑は半ベソ状態で彩花に続いた。

「彩ちゃ〜ん、怖いねぇ。」
「怖いって思うから怖いのよ。」
「うん、でも怖いねぇ〜。」
「・・・・・・。唯笑ちゃん話聞いてる?」
「うん、やっぱり怖いねぇ〜。」
「・・・・・・。じゃあ行くよ。」
ひょいっと智也の家の屋根に飛び移る。
「彩ちゃ〜ん、置いてかないでよぉ〜。」
まだ唯笑は窓枠にしがみついている。
「ほぉらぁ〜、大丈夫だからね。」
「えぇぇ、大丈夫じゃ〜ないよぉぉ。」
「唯笑ちゃん、頑張って。」
「うん・・・。」
そう自分で飛ばないとダメなんだよ・・・。唯笑ちゃん。

「じゃあぁぁ、行っくねぇぇ。エイッ!!」
なんとか不恰好ながら智也の家の屋根に飛び移った唯笑。
「できたぁぁぁ、できたよぉぉ彩ちゃ〜ん。」
「うんうん。よかったね。」
「えへへへ。」

そこでガラッ!!と窓が開いた。
「お前らなぁ、朝っぱらうるさいぞ!!」
不機嫌そうな智也が顔を出す。
「人の家の屋根で何やってんだよぉ。」

「あっ、智也。」
「智ちゃん、おっはよぉ〜。」
「おっはよぉ〜、じゃねぇだろうが・・・。」
頭をかきながらあくびをする智也。
「あのねぇ智也。朝って言うけど、もう10時だよ。いつまで寝てるのよ。」
「ねぇねぇ智ちゃん、プール行こうよ、プール。」
「・・・・・・、2人同時にしゃべるなよ。まだ頭が回ってないんだから。」
彩花と唯笑は互いに顔を見合わせた。
「フフフフ」
「キャハハハハ」
2人の笑い声が夏の空に舞い上がっていく。

to be continued ... written by 竹河晴(AZALIN) 2001.08.04

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・作者後書き
えぇ〜第1回からだいぶ間が開いてしまいましたが、第2回をお届けします。
夏といえばプール、という単純な発想ですが、今回はプールに出かける前の話です。
ってことは次回はいよいよプールの話・・・、ですね。こうご期待!!